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教員紹介

田中 健次 教授 TANAKA Kenji

  • 社会知能情報学専攻
  • 経営情報システム学講座
  • tanaka(at)is.uec.ac.jp

1.リスクマネジメント

情報技術の発達により生活は便利になりました。しかし不透明性が進み、それらは新しいリスクも生み出しています。ところが、リスクマネジメントの方法論は未だ確立されてはいません。リスクを発生させるのは設計者やユーザである「人間」あるいは人間の創り出した「モノ」であり、リスクを防ぐのもまた「人間」です。したがって、リスクのマネジメントは個々の人間の視点から考えることが必要不可欠です。

リスクマネジメントは、製品安全設計からITS(高度交通システム)、大規模自動化プラントの安全設計、医療事故防止、災害時の緊急対応まで様々な分野で必要になりますが、人間に視点を置くと、それらには共通の構造が見えてきます。関与する人間の認知・判断・行動特性に着目し、統一的な枠組みとして『システム安全学』を確立することが現在の研究の目標です。

そのために、原理を追究するための応用確率論モデルによる数理解析、状況を再現し予測するための認知工学実験やシミュレーション実験、組織や社会の仕組みを解明するための社会科学アプローチなど多様なアプローチを統合することにより、現実の問題発生メカニズムを捉えトラブル予防や軽減を実現するための仕組みを積極的に提言しています。現代が求めているのは、社会リスクの評論家ではなく、社会システムのデザイナーです。

2.安全獲得への4つのアプローチ

(1)安全性の高いヒューマンマシンシステム

完全自動の無人列車と人間の判断を取入れた有人列車、より安心できるのはどちらでしょうか。人間のエラー確率は機器の故障率より遥かに大きいことが知られています。それにも関わらず、人間の操作に安心できるのはなぜでしょうか。自動化システムの設計には、自動化システムに対する人間の正しい理解、信頼感の解明が欠かせません。しかし、不信や過信のメカニズムは未だわかっていないのです。自動化が進めば進むほど、人間と機械の協調、コミュニケーションが必要になりますが、どのような役割分担が適切なのか、不確実性下での意思決定はどのように行なうべきなのか、ドライビングシミュレータを用いた実験や、認知心理学の知見を取り入れた数理モデルの解析による解明を試みています。

(2)高信頼性監視制御は生物がヒント

言うまでもなく、世の中で最も高信頼度なメカニズムを有するのは生物でしょう。免疫系の多重防衛機構、自律分散構造による耐故障性、それらは実に上手く作りこまれています。それらの基本原理を活用し、人工システムの高信頼性や安全性を獲得することができます。
多数のゾウリムシが泳ぐ様は、大変ユニークです。個々は勝手に右往左往して泳ぎ回っているのにぶつかりません。適温では優雅に広範囲を泳いでいるのに、水温を上げると頻繁に方向を変え、快適な場所を探し求めているかのようになります。移動性のあるセンサ群に簡単な癖を入れるだけでこの性質(走性行動)を模倣でき、正常な領域では優雅に広範囲を監視し、異常発見領域では周辺を重点的に動き回る自律分散型の監視システムを構築しました。現在はアリのフェロモンコミュニケーションを利用したセンサ群制御を構築しています。

(3)情報創造型の活動の仕組み

2度同じ病気にかからない免疫の記憶作用はよく知られています。人工のシステムも病歴情報を有効に利用し、故障から学ぶ機構ができるはず。最近のシステムの失敗原因の多くは物理的故障ではなく、設計段階の予測と運用後の現実との「ずれ」で発生しています。この「ずれ」に関する情報を運用過程で迅速にキャッチし学ぶことで、多くの大事故を未然に防ぐことが可能になります。小さな事故やヒヤリハットから学ぶシステムは、トラブルの未然防止や創造型保全活動、医療事故の防止、組織事故防止や大規模システムのマネジメントには極めて効果的なものです。イギリスで生まれたソフトシステム方法論などを利用して、これらの仕組み作りに取り組んでいます。

(4)社会システムでのリスク回避も基本は人

安全問題で厄介なのは、立場によって、安全の捉え方が異なることです。システム設計者、運用者、ユーザなど複数の主体が異なる評価尺度を持っています。自律分散型の意思決定システムとしてとらえる必要性から、ポリエージェントシステムモデルを利用した解析を進めています。特に最近は、災害時対応システムに注目し、大規模災害時の意思決定問題、有効な災害情報システムのあり方等について、人間個人の認知・判断過程に着目した新しいモデルを提案しています。後者のモデルは、気象庁・内閣府により採用されました。

3.解析の基本はシステム思考と数理モデル

解析の基本はシステム思考と数理モデル、すなわち、対象を「システム」として把握するための思考方法と、問題の本質を把握するための数理モデルです。解法ありきで始めると新しい発想が生まれないため、生物を情報の観点から眺めたり、シミュレーションを駆使して、人間の思考を利用した新しいタイプのリスクマネジメント論を考察しています。生物や認知科学、リスクに関する基礎知識がない人でも、安全に人一倍の関心がある人であれば、我々の研究グループに参加することができます。

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