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教員紹介

栗原 聡 教授 KURIHARA Satoshi

  • 社会知能情報学専攻
  • 社会情報システム学講座
  • kuri(at)is.uec.ac.jp

~大規模複雑システムの理解・制御・構築を目指して~

加速する複雑ネットワーク化

インターネットの急成長やユビキタス情報基盤の拡充,そしてスマホの普及や様々なソーシャルメディアの登場に伴い,あらゆる人と物がネットワーク化され,実環境とネット世界とが融合した複雑な情報社会環境が現実になろうとしています.この新しい環境は,大規模複雑ネットワーク構造を有し,その構造が常に拡大し変化し続ける「動的複雑システム」です.

さらに,個人の行動とその集合として創発される社会システムや,脳神経細胞ネットワークとそれが創発する意識との関係,また,交通システムにおける個々の車と交通流との関係や,個々人の売り買い行動と株価変動との関係等は,それぞれ,ある要素集合の振る舞いが別の階層の要素や要素集合の振る舞いを創発する「階層構造」と見ることができます.そして,これらの階層構造に共通するのが,『個々の階層がある要素集合によるネットワークとして構成され,ネットワークとしての振る舞いが別の階層における個々の要素を創発し,創発された要素が同様に創発された他の要素集団とネットワークを構成して,そのネットワークがさらに別の階層の要素を創発する・・・・』,というダイナミクスを持つことです.しかも,階層が階層を創発する関係にありながら,個々の階層におけるダイナミクスは階層ごとに独立しており,個々の階層にて流れる時間の粒度も階層ごとに異なるところが極めて特徴的です.この階層構造は上記例を始め,我々の日常生活に多く遍在しており,まさに複雑系階層構造と呼ぶべきものです.

創発される階層

我々の顕在/潜在意識は,超多数神経細胞による複雑ネットワークが創り出しているものの,我々は意識的に個々の神経細胞の振る舞いを知覚することはできず,また個々の神経細胞も「意識」を創発している認識を持ってはいません.脳細胞は成熟期に入ると一日数十万個死滅すると言われ,物理的な意味で常に同じネットワーク構造を維持することはできませんが,一方,「意識」という,神経細胞ネットワークにより創発された階層では「自分」という一貫性のある認識が維持されています.つまり,神経細胞ネットワークが創発する意識層というものが,神経細胞ネットワーク構造の変化に依存しながらも,意識層は高い動的特性と安定性を保つ仕組みを持っていると考えられます.常に変化する神経細胞層がそのような意識層を創出し安定させ,しかも意識層のレベルにおいては個々人においてほぼ共通した機能を持たせることを可能とするためには,時間の粒度に注目し,階層間の影響関係を極めて低くする仕組みを解明する必要がありますが,未だ大きな謎であると言わざるを得ません.

これに対して,我々が工学的に設計してきた従来の階層構造は,上記に挙げた階層構造とは大きく異なるものです.これまでの階層構造では,階層間における綿密な連携機構が存在し,個々の階層におけるダイナミクスも階層ごとに独立してはいません.上述する複雑系階層構造が階層ごとのダイナミクスの他の階層への影響を低くすることが目的であると考えられるのに対し,従来の工学的階層構造では,ある問題を解決するに際し,事前に想定される計画に基づいて段階的に問題を分割して問題を解決することが目的です.

目指すもの

つまり,近い将来想定される大災害に対する防災・減災に向けた取り組みを始め,今後さらに大規模化が加速するであろう,社会システムや交通・物流システム,ソーシャルメディアなどの動的複雑系に対して,高い適応性を有するレジリエントな知的システムを制御・デザイン・構築するための方法論を確立する必要があります.そして,そのためには,人工知能・複雑ネットワーク科学・脳科学・社会科学・複雑系を始めとする様々な分野を横断した多角的な取り組みが必要となります.

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