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教員紹介

岡田 和則 客員教授 OKADA Kazunori

  • 情報ネットワークシステム学専攻
  • ネットワークアーキテクチャ学講座
  • 独立行政法人 情報通信研究機構
  • okada(at)nict.go.jp

1.はじめに

携帯電話の加入者数は、平成19年12月末で約1億52万となり、1億を超えた。平成元年では、約49万であったのが、今や、移動通信なしに、通信ネットワークは語れない状況になっている。

私が、移動通信の研究にかかわったのは、加入者数が10万になるような時で、当時は、自動車電話と呼ばれていて、運転手のいる黒塗りの車にあるだけの高級なものであった。携帯することが出来る携帯電話は、ショルダーバックのようなものを抱えなくてはならないものであった。それが、ポケットに入れて持ち歩ける位小型・軽量になり、料金も安くなり、小・中学生までもが持つようになった。これだけ普及すると、いろいろな問題も起きる。ハイジャック犯の様子を伝えたりすることもあれば、逆に誘拐犯に使われたりすることもある。元は、自動車電話なのに運転しながら使うと事故が起こりやすいという問題が起きたが、これは、昔は、自動車電話を使っていたのが、運転している人ではなく、後ろに乗っている人だったから問題が生じなかったと思われる。いずれにせよ、これだけ普及しているから起こる問題であろうし、移動通信が社会の中に深く入り込んでいる現れでもあると考えられる。

2.移動通信の世代

このように発展した移動通信には、技術的に見て世代がある。第1世代は、1980年代で、電話(音声)サービスの提供で、アナログ方式を用いていた。第2世代は、デジタル方式である。サービスとしては、電話だけではなくデータ通信も対象になっている。2001年からは、IMT-2000という第3世代の移動通信が始まった。IMT-2000とは、International Mobile Telecommunications-2000の略で、基本概念としては、マルチメディア通信サービスの提供、世界標準によるグローバルサービスの提供、有限である無線資源の有効利用である。現在は、スマートフォンの普及によるトラヒックの増大に対応する等のためLTE(Long Term Evolution)が開始され、さらに、LTEを発展させたLTE-Advancedが導入されつつあるところである。

3.研究分野

移動通信システムは、様々な分野の技術の集積により構築されている。その中で、私は、ネットワーク的な制御によって、移動通信に用いる有限な周波数資源を、効率よく利用する技術の研究を行なってきた。具体的には、ダイナミックチャネル割当といって、通話をするために必要な資源(チャネル)を通信需要に従って割り当てて有効に利用するというものである。現在は、地震等の大規模な災害時等でも携帯電話が安心して使用できるために以下の問題に対する研究を中心に行なっている。

平成7年1月に起こった阪神・淡路大震災の時には、家族等への安否確認等により、通信需要は急増し、全国から兵庫県にかけられた固定電話は、通常の約20倍(ピークで約50倍)になった。携帯電話については、当時、全国で約430万加入とあまり普及していなかったので、大きな問題にはならなかった。しかし、一般に普及した現在、大規模災害時には、通信需要が急増して、輻輳状態になり、使えなくなることが多くなった。現に、平成15年5月の宮城県沖地震や平成16年10月の新潟県中越地震では、通常の数十倍という通話要求が起こり、携帯電話がほとんど使えない状態になり問題になった。平成23年3月の東日本大震災においても同様な状態となった。特に、携帯電話の場合は、有限な周波数資源を使うために、通信容量を増加させるのが難しく、輻輳を解消するのは、難しい問題である。

また、大規模地震時等には、停電や伝送路の切断により、携帯電話とネットワークを結ぶ無線基地局が停波してしまうことがある。東日本大震災では、合計約29,000局が停波した。被害の大きい激震地域では、救援のための通信など重要な通信が多い。しかし、激震地域の基地局が複数停波することも今後も十分に予想され、このような地域の重要通信を高信頼に確保する問題を考える必要がある。

これらの問題は、いわば特殊な場合のものであるが、携帯電話が社会インフラとして安心して使えるための現在及び将来の携帯電話ネットワークが対応すべき重要な事項であり、輻輳制御、地上系だけでなく衛星系も含めたマルチシステムアクセス、非常時に耐性のある無線統合ネットワーク等の様々な技術の研究に取り組んでいる。

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