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教員紹介

森田 啓義 教授 MORITA Hiroyoshi

  • 情報ネットワークシステム学専攻
  • 応用ネットワーキング学講座
  • morita(at)is.uec.ac.jp

個人的プロフィール

私は情報理論、アルゴリズムの確率解析に関心をもつ応用数理工学者です。学生の頃は,当時注目を浴びていた生物工学を専攻するつもりでしたが、学部時代に読んだウィーナーのサイバネティックスや、まわりの環境も手伝ってか、気がつくと博士課程では情報理論の画像応用への研究を行っていました。

これまでの20年間、情報理論、画像処理、通信理論の分野でいくつか仕事をしてきました。情報理論の分野では、80年代初期から日本ではまだほとんど知られていなかった算術符号の研究を開始し、その後は、3次元物体表面計測、CG、Lempel-Ziv符号、エディット距離、フレーム同期問題、剰余環上の符号とそれを用いた符号化変調、反辞書符号化などなど、ほとんどなんの脈絡もなく,さまざまなテーマに挑戦し、一応それなりの研究成果をあげてきたつもりです。最近はこれらまで自分のやってきたことを振り返って、情報データ解析学として体系づけたいと考えるようになってきました。

情報データ解析学とは何か?

データ解析は、観測されたデータを通してそのデータに内在する構造を理解するための方法論の体系であり、従来、信号処理や統計学におけるさまざまな手法が開発され、応用されてきました。

ところが、計算機やそれらのネットワークによって人工的に生成される膨大なディジタル・データ(情報データ)を解析するためには、出力データの背後にあるアルゴリズムや、データを表現する木やリストなどの、いわゆるデータ構造まで深く理解した上での新たな解析手段が必要となります。

これらのデータ構造を統一的に取り扱う確率的解析手法は、ヨーロッパや米国・カナダの研究者を中心にして目下急速に発展してきています。しかし残念ながら日本ではほとんど研究が進んでおらず、世界のレベルから遠く離れたところにいるのが現状です。

情報データ解析学では、上述の確率的解析手法を用いて、情報システムの性能限界を見極めることを究極の目的とし、情報システムが生み出す多種多様な情報データの数理的な構造を探求し、その上で、データの担う情報を抽出・加工する技術を新たに生み出していく学問体系です。

研究テーマ

院生の人たちと現在行っている研究テーマをいくつか紹介します。それぞれ別々の問題設定がなされているので、一見すると、情報データ解析学と一体どう関係するのだろうと訝しく感じられるかもしれません。しかし、用いる手法やシステム評価の仕方に情報データ解析的な新しさがあります。もっと詳しいことを知りたい方は是非(morita@is.uec.ac.jp)までご連絡をお寄せください。

情報 (リアルタイム通信システム)

ビデオ放送などのリアルタイム制約をもつ情報をネットワークを介していかに効率よく伝送するかという問題。これまでに、MPEG2のフレームサイズの時間的変動が自己相似性と長期依存性を有し、ブラウン運動の特別なクラスであるfBmによってモデル化できることの確認や、激しく変動するフレームサイズをバッファリングによって平滑化する手法の提案を行ってきた。現在、これらの知見を踏まえ、多ユーザ通信の一種であるマルチキャスト通信方式によるビデオ放送の実現を目指している。

データ (生体情報データ処理)


心電図などの生体情報の常時モニタリングのためにネットワークを介した通信技術の確立。その第一歩として、心電図データの圧縮や不整脈のリアルタイム検出などの新しい手法を開発している。現在は、データ系列に出現しない部分列からなる反辞書と呼ばれるデータベースの一種を利用した心電図データの符号化法に関する研究を進行中。

解析 (MPEG2/4データ解析)

MPEG2あるいはMPEG4の内部処理では、高度な動画像解析アルゴリズムが用いられており、それらの解析結果を利用することによって大幅なデータの削減が可能になっている。これらの解析結果をうまく利用して、圧縮ビデオから新たに画像復元・画像処理を行わず、圧縮データのままビデオ検索やシーン分析するための方法論の確立とその応用。これまでに、MPEGデータからカット点の検出(2002)や,競馬などの周回レースにおけるスタート地点、ゴール地点の検出(2003)を行う。

最後に一言

最初に情報データ解析学を体系づけるなどと大それたことを言いましたが、新しい学問体系を構築するのは並大抵なことではありません。

でもどんな課題でも、途中であきらめてしまえば、達成は不可能です。結局のところ、研究者の資質とは(たとえ他人から見るとだめでも)どれだけ一つの問題を考え続けられるかという一点にかかってくるのではないかと思います。

その意味で、情報データ解析学は私自身のこだわりでしかありませんが、ちょっと面白そうだからやってみようか、と少しでも学生諸君に思ってもらえれば研究者冥利に尽きるというものです。

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