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教員紹介

豊嶋 守生 客員教授 TOYOSHIMA Morio

  • 情報メディアシステム学専攻
  • 知能システム学講座
  • 独立行政法人 情報通信研究機構
  • morio(at)nict.go.jp

1.はじめに

年々、地球観測衛星によるデータは、観測頻度の増加、解像度・分解能の向上など増大の一途をたどっています。電波による無線通信は、そのキャリア周波数が数十GHzのオーダなので、伝送速度に頭打ちが来るのは時間の問題です。一方、光による無線通信では、光の周波数が数百THzであり、電波の何百倍もの速度で情報伝送が可能となります。電波も光波も同じ電磁波ですが、とりわけ宇宙における光波の利用は、使用レーザの周波数が非常に高いことに起因して、小型・軽量化、高速・大容量化などの特徴を有し、電波よりも将来に向けて有望な通信手段となります。周波数資源の有効活用ができ、法的規制が無いという利点もあります。

2.これまでの研究開発

情報通信研究機構(NICT)の研究グループでは、直径1.5mの光学望遠鏡を有しており、これまで人工衛星と光無線通信を行うための研究開発を行ってきました。1994年には静止軌道衛星の技術試験衛星VI型(ETS-VI)と光地上局との間で世界初の光通信実験を実証しました。伝送距離は4万kmで、波長0.5μmと0.8μmのレーザを用いて、伝送速度1Mbpsを達成しました。また、2006年には低軌道衛星の光衛星間通信実験衛星(OICETS)と光地上局の間で、50Mbpsで世界初の双方向光通信実験を実施しました。伝送距離は約1000kmですが、衛星から送信したビームのサイズが、地上ではたった6m程度にしかならない狭レーザビームで、高精度な捕捉追尾が要求されます。以下に研究テーマを示しますが、それぞれに衛星の捕捉追尾技術というのは根底にある重要なテーマとして含まれます。

3.研究テーマ

衛星搭載用光通信機器の開発

当研究室では、50kg級の超小型衛星に搭載する光通信機器の開発を行っています。そう、50kgの衛星といえば高専や大学生が作って打ち上げているあのサイズです。宇宙開発に少しでも携わりたい学生諸君、是非、門戸を開いてみませんか?超小型衛星を使った光通信の技術開発に携われるだけでなく、通信方式や衛星実験に関する自分のアイデアを提案をすることで、オリジナルな研究テーマとして研究を進めることができます。

大気ゆらぎ補償技術

夜空を眺めると星が瞬きます。これは大気ゆらぎという影響によるもので、大気中の屈折率のランダムな変動により光の位相が乱されるからです。同様にレーザを空間伝送すると、大気ゆらぎによりフェージングを受け通信品質が劣化します。光無線通信において、いかに信号変動を抑え通信品質を改善するのかということを研究対象とします。大気ゆらぎを抑制するための技術として、マルチビーム伝送方法や、すばる望遠鏡に使われている様な補償光学(Adaptive Optics)、また符号化等が入ります。

コヒーレント光通信技術

イントラダインと呼ばれるコヒーレント光通信を空間伝送へ適用する研究を行っています。近年、デジタルコヒーレントとも呼ばれるこの方式は、伝送路における信号の歪(光ファイバにおける分散や大気ゆらぎによるフェージングなど)をデジタル処理により補償できる技術です。FPGAによる高速演算処理回路を構築し、伝搬補償をリアルタイムに行うアルゴリズムの検討やフィールド実験を行うことを研究対象とします。

無線量子暗号技術

近年、セキュリティーの問題は非常に重要になってきています。インターネット等で既に普及している公開カギ暗号技術は、量子コンピュータの台頭で無効になった場合、代替手段として絶対安全な量子暗号技術は有望視されています。ファイバにおける量子暗号技術は既に実用段階に入ってきていますが、ファイバにおける量子鍵暗号伝送は、その減衰等のために100km程度が量子鍵配布の限界です。そこで、衛星を用いれば空間伝送で距離を延ばすことができ、量子鍵暗号の技術的な内容を研究対象とします。

衛星通信の高機能化技術

将来、光宇宙通信技術は、宇宙において情報通信革命を起こすと期待されています。高速光衛星間通信ネットワークはもとより、宇宙におけるシェアドプロセッシング、シェアサーバ、Radio-on-Fiber(RoF)技術による衛星上での信号処理技術、RoFを用いた複数衛星による高解像度観測等、衛星における情報の新たな処理形態の創造などが上げられています。衛星通信の高機能化技術のひとつとして、衛星にRFID等のタグ技術を用いて衛星における情報処理技術の高機能化があります。衛星システムの情報をどう収集し配信するか、そこはインテリジェントな知能システムが必要であり、RFIDや通信デバイス及び電子回路などをどう構築していくかなどが研究対象になります。このように、地上で行われている技術を宇宙に適用することや、新しいアイデアを提案していくことで、新たな価値を創造するのも研究対象となります。

4.まとめ

みなさん、宇宙と聞いてどういうイメージを持たれたでしょうか?宇宙の起源や人類誕生の謎に迫る人類の知の探求などは、非常に夢のあるイメージだと思います。通信とは表舞台には立たないけれども、そのような夢のある人類の知の探求を支える縁の下の力持ち(インフラ)です。みなさんも身近でご存知のように、近年、地上ではADSLや光ファイバの普及により、一般家庭にも高速な通信環境が利用可能になってきています。将来、これらの地上における通信回線はさらに高速になり、光ファイバと衛星までもが高速光通信でつながる全光ファイバネットワークが実現されるかもしれません。

教員紹介