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教員紹介

野嶋 琢也 准教授 NOJIMA Takuya

  • 情報メディアシステム学専攻
  • 対話型システム学講座
  • tnojima(at)is.uec.ac.jp

「情報とは、われわれが外界に対して自己を調節し、かつその調節行動によって外界に影響を及ぼしてゆくさいに、外界との間で交換されるものの内容を指す言葉である。」 サイバネティクスの父、Norbert Wienerはその著書、人間機械論において情報をこのように定義している。つまり、文字や映像で表現されるものだけが情報ではなく、人間に対して入力されるもの、出力されるものの全てが情報である、としているのである。

人間が「外界との間で情報を交換する」手段としては、いわゆる五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)や前庭感覚(加速度)を通じた情報の入力と、音声や自らの身体を用いた行動という形での情報の出力とがある。この時入出力を問わず、人間と外界との間を繋ぐものをヒューマン・インタフェース(HI)と呼ぶ。例えばディスプレイやキーボードは人間と計算機の間を繋ぐHIであり、人間と車の間を繋ぐHIであれば、メーター類やハンドル、アクセル等のペダル類はもちろんのこと、シートも加速度情報を提示するためのHIとみなすことができる。

人間はその情報の多くを視覚に頼っていることもあり、これまで人間への情報入力手段としてのHIは、計算機画面のGUIに代表されるような視覚的な側面が重視されてきた。しかし近年、計算機能力の向上に伴うシステムの高度化・複雑化により、人間に対して提示される情報が増加しており、人間の視覚情報処理負荷の増加という問題が顕在化しつつある。

例えば飛行機の場合、技術の発展とともに大型化・高機能化しており、コックピットの計器数も膨大なものとなっている。昔はせいぜい十数個程度しかなかったが、大型の飛行機として知られるジャンボ機の場合、一世代前のBoeing 747-200という機種では計器は約971個にまで増加している。この計器の多さはフライトクルーにとって大きな負担となっていた。

このような問題に対しては、いくつかの対策が考えられる。ひとつは自動化技術などと組み合わせることによる提示情報の削減である。実際に747-200の次世代機である747-400では、この考えを基本としたコックピットを設計し、計器の数を約365個にまで減少させ、クルーの負荷軽減に成功している。

もう一つの方法は視覚のみに頼らず、複数の感覚を通じた情報提示を行うことである。本来人間には、複数の感覚器からの情報を同時に取得し、適切に選別・処理する能力が備わっている。人間は生まれた時からこの能力を駆使して外界を認識していることから、複数の感覚器への適切な情報の配分・提示は、将来的により自然かつ高度なHIの構成を可能にするものではないかと予想される。実際にバーチャルリアリティ(VR)の分野においては、視覚や聴覚のみならず、触覚や嗅覚による情報の提示に関する研究が盛んに行われており、これらの提示技術を複合的に組み合わせることによって、より高度な、しかし人間にとってより自然なHIの構築が可能になると考えられる。このようなHIを利用することで、文字通り自らの手足のように飛行機を感じ、操縦するという未来が訪れる可能性すらあるかも知れない。

そこで我々は、より高度かつ自然なHIの構築を目指し、VRにおける感覚提示技術(特に視覚提示と触覚提示)と、それに関わる人間特性、そしてVR技術のHIへの応用(特に航空関連)を中心とした研究を行っている。

研究を遂行する上では、センサやアクチュエータなどデバイスに関するものからソフトウェア、そして人間の生理的特性に至るまで広範囲の技術・知識が要求される。また、発展していく科学技術、変化し続ける人間社会を冷静に見つめ、将来のあるべき姿を常に模索し、それにふさわしいシステムを設計・制作しつづけるという姿勢も必要となる。人材の育成に当たっては、これらの技術・知識・姿勢だけでなく、未知の領域を切り開き、先駆者となることの楽しみ・喜びも同時に伝えていきたいと考えている。

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