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教員紹介

小峯 一晃 客員准教授 Komine Kazuteru

  • 情報メディアシステム学専攻
  • 人間情報学講座
  • komine.k-cy(at)nhk.or.jp

はじめに

映像情報環境の高度化

日常的に接する映像の品質は年々高まり、映像の表示技術については、ここ数年で加速度的に進展しています。高い解像度のディスプレイに映し出される超高精細広視野映像や3Dディスプレイで提示される立体映像などの多種多様な映像情報はヒトにどのような効果をもたらすのでしょうか。コンテンツ制作者の意図は効率的に伝わっているでしょうか。
私が行っている研究はこのような映像情報環境の高度化がもたらすメリットをユーザが享受するためにはどのようなコンテンツが望ましいかを明らかにして効果的な映像制作の支援に繋げることを目的としています。

映像情報の受容特性

番組などの映像情報は人に受容されて初めてその価値を生じることを考えると、映像に対する人の受容特性を知ることは質の高いコンテンツを制作するうえでの有用な知見となります。
しかしながら、映像のどのような特徴が視聴したときの印象や情報伝達などに関係するか、などの知見については現時点で十分な蓄積はなく、定量的に評価する手法も確立していません。番組の評価は高次な認知活動ですが、もう少し低いレベルでの映像の受容(ぱっと見の印象など)についてもその特性にはまだわからない点が多くあります。例えば、同じ内容の映像でも画素密度の高い高解像度ディスプレイで表示すると立体的に感じることがありますが、なぜそのように感じるのかについては、まだ明らかになっていません。

具体的な研究内容

コンテンツ評価技術

人が映像コンテンツを視聴しているときの主観的な印象や生体指標を利用して、映像に含まれる様々な特徴に対する受容特性を明らかにするとともに、その特性に基づいて映像の質を評価することを試みています。具体的なアプローチは以下のとおりです。いずれも人(実験参加者)を計測の対象とする研究となります。

印象評価・心理物理実験
映像コンテンツの印象を評価する際には、SD(Semantic Differential)法に代表される、印象を多次元で評価する方法を用いて評価の要因を調べています。また、映像の表示解像度と立体感の関係など、パラメータとして物理量を変化させる場合には、心理物理実験によって評価(知覚)の特性を調べます。
眼球運動
「目は口ほどに・・・」といわれるとおり、目の動きは映像中のどこに注意を向けているか、視聴している人の心の状態を示す有効な行動指標です。多人数の眼球運動データを用いて視線の集中度と内容の理解度との関係を求め、映像のわかりやすさについて定量的な評価を試みています。眼球運動には本人の意思によるトップダウンの注意と映像の特徴に由来するボトムアップの注意の両者が反映されているので、データから視聴者の状態を推定する際に有効な成分を推定するモデルを構築することが研究課題となります。
脳活動計測
映像視聴時の脳活動は、眼球運動では推定が困難とされている注意の強度などの情報や、映像コンテンツに対する印象などのより高次の心的状態に関する情報も含んでいると考えられます。
面白さ(ユーモア)やわかりやすさなどの映像に対する印象と、それを視聴している時の脳活動との対応から、主観的な印象が生じる際の特徴的な脳活動パターンを抽出し、脳活動データから映像の質についての評価を時間的な変動も含めて推定できるようにすることをめざしています。
脳活動データには眼球運動以上に多様な情報が含まれているのでノイズが多く、いかに目的の信号を抽出するか、実験方法、解析法などに課題があります。

研究成果の活用

以上で紹介したような評価手法を用いて映像コンテンツの視聴によってもたらされる効果を心的状態の変化として数値化し、制作者へフィードバックすることを想定しています。制作者が施している演出など種々の制作上の工夫について、その有効性を判断する指標として活用されることを期待しています。

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