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教員紹介

樫森 与志喜 教授 KASHIMORI Yoshiki

  • 情報メディアシステム学専攻
  • 生体情報システム学講座
  • kashi(at)pc.uec.ac.jp

1. はじめに

生物は、外界の環境の変化に応じて体調を整え外部からの情報を受容してその意味を理解 し外界に積極的に働きかけていく、自己組織的な情報システムです。私たちは、このような生命体における情報処理のメカニズムを解明するために、神経システムおよび生物社会システムについて、それらの本質をとらえたモデルをつくり、コンピュータシミュレーションを行っています。

2. 主要研究テーマ

(1) 脳の情報処理のメカニズム

(a) 各種感覚システムにおける外界の認識 ? 面フクロウの音源定位、電気魚の電気定位、コウモリのエコーロケーション。これらの系は実験的にその情報処理の概略はわかっているのですが、それらがどのようなアーキテクチャーで実現されているのか、はまだ明らかではないのでそれを神経モデルによって研究している。

(b) 認識におけるトップダウン信号の役割 ? 感覚情報の処理には、低次部位から高次部位へのボトムアップ的な情報処理だけでなく高次部位からのトップダウン的な処理がなければ複雑な刺激から早く正確な認識はできない。我々は、視覚系における物体形状認識をモデル系として予測信号としてのトップダウン信号の役割について調べている。

(c) 認識における行動の役割 ? 感覚情報は行動と結びついて初めて認識にいたると考えられる。この認識における行動の役割を研究するため、行動が明確な形であらわれる面フクロウや電気魚をモデル系としてこの問題を考えている。また、様々な動物のナビゲーション行動についてもこの問題を研究している(ラットの空間認知の神経機構、蜜蜂の採餌行動の神経機構)。

(d) 異種感覚統合のメカニズム ? 視覚と触覚の感覚統合における相互作用をみるため仮想空間をもちいた心理学実験を行い、相互作用を記述する心理学的パラメータを見出し、それを説明する内部モデルを作成している。

(2) 生命複雑系における動的秩序創発の機構

(a) 捕食者に襲われた魚群の行動 ? 魚群の行動が自己組織的に形成されるモデルをつくり、様々な外部環境(捕食者の行動)に対する群行動のもつ適応行動を研究している。

(b) 免疫システムにおける自己・非自己の識別メカニズム ? 侵入した病原を排除するという免疫の働きよりも、最近では自己を規定するものが免疫システムである、という面から生体における免疫システムの意義が注目されている。自己というものが物質レベルでどのように確立されるのか、免疫のネットワークモデルを構築して、その性質を解析していく。

(c) 人間社会におけるつきあいの適応進化?人間社会におけるつきあいをゲーム理論と適応進化の方法で研究し、利他行動のような人間社会に特有の行動がどのようにして創発し安定になるのか、そのメカニズムを探っている。

3.研究方法と戦略

自然現象の本質をとらえたモデルを構築し、そのモデルを通じて自然現象をコンピュータの中に再現する。種々の条件下でシミュレーションを行なうことによって現象を支配する法則をみつけるというコンピュータ物理学の手法を用いて研究を進めています。(ブルーバックス“コンピュータ物理の世界” “パソコンで見る複雑系・カオス・量子”参照)

戦略としては、要素還元主義によるボトムアップの方法と、構成的包括的方法によるトップダウンのアプローチの両方を併用して、生物らしい特徴をそなえたパーツより成る生体システムのモデルを構築していく。生物の機能は、生物の個々のパーツをいくら詳しく調べても見えてこない。システム全体として考えていかないと生物特有の面白味はでてこない。しかし、それらシステムの機能は個々のパーツが自己組織的に集合し相互作用することにより生じてくるもので、システム全体の設計図に従って形成されたものではない。したがって、個々のパーツの個性をとらえたモデルを作ることが大切です。

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