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教員紹介

比留間 伸行 客員教授 Hiruma Nobuyuki

  • 情報メディアシステム学専攻
  • 人間情報学講座
  • NHK放送技術研究所
  • hiruma.n-dy(at)nhk.or.jp

何を知りたいか

私の研究テーマは、主に人間の視覚からの情報の受容特性を解明し、放送をはじめとする電子メディアの開発に役立てることです。新しいメディアをデザインする際には、それを最終的に受容する人間の特性に対し過不足の無い設計とすることが重要です。普通に考えると、画像の精細度は高い方が望ましいでしょうし、音響の再生周波数帯域は広い方が望ましいと思われるでしょう。しかし、そのようなコンテンツを制作・記録し、広く個々人まで伝送しようとすると、装置規模や伝送帯域、そしてコストを無視することはできません。想定された視聴環境において、ほとんどの人が見分けられない、聞き分けられない情報を記録、伝送するためにリソースを費やすのは合理的ではありません。といって、その魅力を減殺する程データを削減してしまっては、そもそも新たなメディアを開発する意義が疑問になってしまいます。

何が問題か

そこで、映像や音響の品質を科学的に評価する技術が必要になってきます。ここで再度強調したいのは、単に電気的な特性が優れる、ということではなく、人間による受容のされ方を評価することが大切だという点です。ただし、人間という、比類無い精緻さと融通無碍ないい加減さを併せ持つ「測定器」によってシステムを評価しなければならないところに難しさがあります。オーディオやビデオは趣味性の高いもので、その製品の優劣を吟味したり、構成を変更して改善を図ったりする読み物が沢山発表されています。大変楽しい読み物ではありますが、自分でいじった装置の出力を自分で視聴して結果の善し悪しを判断した内容は、それだけでは科学的には正当性を主張できません。そのような営みに意味が無い、と言っているのではありません。こういった自由な試みから新しい技術の萌芽が生れるのでしょうし、なにより好奇心を生かした挑戦は大切です。しかし、その結果は本当に有意なものか、その現象の原因は本当に着目している事項なのか、を立証できなければ、科学とは言えません。

どう考えるか ~ 心理物理学というアプローチについて

心理物理学(英語のPsychophysicsという字面を見ると、なんだか超能力の研究でもしているのかと誤解する人もいるようですが、そうではありません)は、その名のとおり心理学の一分野ですが、人間による情報処理や人間が関わるシステムの特性を工学的に研究するにあたり有力な考え方です。着目しているシステムの映像・音響の特徴が、どのような心理的効果をもたらしているかを解明するために、実験参加者(もとは「被験者」と言っていましたが、近年はこう呼びます)に、注意深く整えられた環境に入ってもらい、特徴を制御した刺激(と言うと、針で突っつくようなイメージですが、そうではなく、実験参加者に提示する映像や音響のことです)に対して、予め伝えた教示に従ってタスクを実施してもらいます。そうして、刺激の特徴量や、タスクの結果(課題の成功率や反応時間など)を物理的に計測し、統計的、数理的に検定することにより、仮説を検証していくのが、心理物理学の手法です。

何につながるか

以上のようなアプローチにより、人間とメディアの特性を明らかにし、両者を整合させることを目指しています。また、こうして得られた特性は、人間が行っている情報処理のメカニズムの分析することにも役立つと期待しています。今回は視聴覚の研究を中心に述べましたが、それらに障害のある人に、代替の感覚を利用して情報を確実に伝えるにはどうしたらよいか、を考えることにもつなげたいと、取り組んでいます。

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