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教員紹介

小島 年春 准教授 KOJIMA Toshiharu

  • 情報システム基盤学専攻
  • 基盤ハードウェア学講座
  • kojimax(at)ice.uec.ac.jp

私は、企業の研究所に15年ほど在籍し、配属当初より衛星通信・移動体通信などの無線通信における変復調を中心とした信号処理の研究開発に携わってきました。その中で理論研究からLSIの設計まで幅広く担当し、考案した様々なアイディアを形にして世に送り出しました。現在も、最尤復調・ダイバーシチ・スペクトル拡散といった無線通信における要素技術を研究テーマとしています。企業における15年間を振り返ると、初期の段階では移動体通信のディジタル化の嚆矢であるPDC方式(携帯電話)やPHSの開発に携わりました。そして最後の時期にはW-CDMA(IMT-2000)の実用化を迎えており、ディジタル化に伴う移動体通信の驚異的な発展を身をもって経験してきたことが改めて実感されます。

このIMT-2000に代表されるように、現在の無線通信システムは「いつでも、どこでも、だれとでも」に加えて、マルチメディア化による「どんなものでも」通信を可能とするために、システムが大変複雑化しています。変復調関連の要素技術を見ても、個別技術の研究の進展に伴い、各技術単独での大幅な特性向上は難しくなりつつあります。このため、研究動向は各技術を有機的に融合して特性を改善する方向に向かっており、各分野の学際的な領域に研究テーマが形成されつつあります。このように複雑化する問題に対処するためには、月並みですが、本質を見抜く洞察力が必要になると思います。例えば、教科書にはディジタル無線通信における代表的な復調方式として同期検波と遅延検波という2つの方式が載っており、講義でも両者は別のものとして取り扱われています。ところが、信号処理の観点から見ると両者の違いは信号の観測時間のみであり、本質的な違いはありません。これを「同期検波と遅延検波は別のもの」という見方にとらわれると、見えるものも見えなくなります。また、ダイバーシチ受信では受信信号合成後のSN比を最大化する方式として最大比合成方式が知られていますが、これは通信路に対する空間的な整合フィルタにほかなりません。SN比を最大化するという意味で整合フィルタとの類推は自明のような気もしますが、このことに触れている教科書を私は見たことがありません。通信理論では最尤受信を実現する相関受信機と整合フィルタとは等価であることを学びますが、更に最大比合成ダイバーシチも等価な存在であることを理解できれば、アンテナとモデムを一体のものとして特性改善を図るという最近の研究動向への理解も深まるものと思います。

一方、研究テーマを選ぶに当っても本質を見る目が必要なことはいうまでもありません。いま、無線通信の分野では、OFDM, マルチキャリアCDMA, アダプティブアレーアンテナ, MIMO, 時空間符号化, ターボ符号など流行の研究テーマが目白押しです。目移りがしてテーマの選定が難しいかもしれません。しかし、どの学問でも同じことだと思いますが、一番大切なことは「それが面白いかどうか」です。いくら流行のテーマであっても面白くなければ長続きせず、思わしい結果は得られないであろう事は容易に想像がつくと思います。そして、あるテーマが面白いと思えるかどうかという点においても、そのテーマに潜む本質を見極めることができるかどうかが重要であることも想像に難くないことと思います。実際、華やかな脚光を浴びているテーマ以外にも面白いテーマは数多くありますから、それを見抜く目があるに越したことはありません。そのような目を養いつつ、自分自身で面白いテーマ、楽しいテーマを掘り出すことのできる人を歓迎します。

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