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教員紹介

古賀 久志 准教授 KOGA Hisashi

  • 情報システム基盤学専攻
  • 情報システム基礎学講座
  • koga(at)is.uec.ac.jp

1. はじめに

私の研究者としての特徴は、アルゴリズム解析のような基礎理論を得意とする一方で企業に在籍中に実際のシステム開発に携ってきたことです。具体的には、私は修士学生時代には数学的なアルゴリズム解析だけでプログラムを1行も書かずに過ごしましたが、企業において、組み込み用マイクロプロセッサをプラットフォームとして、ネットワークコントローラチップのドライバを開発したりもしました。

こうした基礎理論と実応用はお互いにフィードバックしながら発展するのが望ましく、私の研究の最終目標は、実システムに役立つ理論的知見の獲得です。近年は、ネットワーク通信をその対象にして来ました。

2. 最近の研究経歴

DVストリーミングシステムの開発(実システム開発)

これは、私が企業に在籍中に開発した、民生DVカメラがi-LINKに送出するDV映像データをIPパケット化してインターネット経由で遠隔地間でリア ルタイム中継するシステムです。インターネットでの動画転送は、mpegの出現以降急速に普及していますが、このシステムの特徴は大容量のDVデータ(1ストリーム当たり30Mbps)を圧縮せずに送ることでDV品質を維持したまま動画再生できることです。
こうした大容量データ転送には、それなりのCPUパワーが必要ですが、本システムではDVデータのIPパケット変換、逆変換をネットワークアダプタ上のネットワークプロセッサで処理する方式で、ホストOSに負荷をかけずに低遅延ストリーミングを実現します。このシステムは、1999年の坂本龍一のコンサートで、フランクフルト、ニューヨークにいるダンサーの映像を中継するのに使用されて、私もスタッフとして大阪城ホールに行きました。

Competitive analysisによるルータでのスケジューリングアルゴリズムの解析(理論的アプローチ)

上記のようなマルチメディア通信を安定して行うには、従来のインターネットに代表されるBest Effort型通信よりも、ネットワーク自体が通信品質保証をする機構を持つ事が望ましく、実際にそのようなネットワーク(QoS (Quality of Services)ネットワーク)の研究が盛んです。
ネットワーク通信における通信品質保証は、インターネットルータでのパケットスケジューリングによって実現されるので、スケジューリングアルゴリズムは非常に重要になります。そこで、私はルータでのパケットスケジューリングを理論的に扱えるようモデル化して解析することを行っています。従来、ネットワーク通信の理論解析では待ち行列理論が利用されていますが、待ち行列理論で仮定するポアソン分布ではインターネットのトラフィックをうまく表現できないとい う欠点があり、私は入力に確率分布を仮定しないオンラインアルゴリズムの新しい解析手法であるcompetitive analysisを利用して解析することを試みています。competitive analysisはオンラインアルゴリズムと最適オフラインアルゴリズムとのコスト比をオンライン近似比としてオンラインアルゴリズムの性能評価を行う手法です。

3. 今後について

最近の研究経歴はネットワーク通信に偏っていますが、目的は実システムに役立つ理論的知見を得ることなので、その分野に限るわけではありません。面白そうな分野があったら積極的に取り組むつもりです。学生の方には、実システムを理論的に取り扱えるように抽象化する問題定式化能力を身につけて頂きたいと考えています。

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