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教員紹介 リレーコラム

情報システムが切り拓く未来 第10回 2013年1月

情報システム学とネットワーク

田原 康之
社会知能情報学専攻 システム設計基礎学講座

1.はじめに

近年の IT 技術のキーワードの中でも、「ネットワーク」は最も重要なものの1つであると思われます。IT 機器のみならず様々な電子機器は、インターネットに代表されるネットワーク接続により、以前にはなかったような活用がなされています。その結果、ソーシャルネットワークサービス(SNS)のように、人と人とのネットワークにも大きな変化が現れつつあります。
このような状況において、情報システム学の研究対象としても、ネットワークは非常に重要です。そして私もそうですが、この分野の研究者は様々なネットワークを、研究対象、および研究の道具として日々取り扱っています。これまでのリレーコラムでも、コンピュータネットワークがよく取り上げられているようです。そこで本コラムでは、主に私の講座での研究で取り扱っている各種のネットワークを紹介します。
物理的なネットワークでは、電子機器を光ファイバや電磁波といった物理的な手段で接続しています。一方本コラムでは、抽象的なネットワーク、すなわち様々な概念を表すノードを、その間の関係を表すリンクで結んだ構造を紹介します。たとえば SNS の1つである Facebook では、各ユーザがノードであり、友達関係がリンクであるようなネットワークが重要な役割を果たしています。またネットワークと考えられる構造は、研究分野や文脈によって異なる名前で呼ばれます。たとえば数学を中心に「グラフ」と呼ばれたり、ソフトウェア工学では「ダイアグラム」、あるいは単に「図」と呼ばれたりすることがあります。たとえば SNS を含めた Web 上の人間同士のネットワークは「ソーシャルグラフ」と呼ばれます。そして1つのノード(根)からリンクが枝分かれしてゆくような木構造もネットワークの1種です。

2.ソフトウェア工学におけるネットワーク

ここでは、私の主な研究分野のソフトウェア工学で重要なネットワークである、UML(Unified Modeling Language)記法の図(ダイアグラム)を紹介します。ソフトウェア工学では、大規模なプログラムの作成、不具合修正、および保守を効率化するために、プログラムの設計書が重要であると考えられています。UML はそのような設計書を作成するための記法の体系です。現在の UML バージョン 2.x には13種類の図があり、そのほとんどがネットワーク構造となっています。たとえば、図1のようなプログラムの論理的構造を表すクラス図は、Java 言語などでも用いられるクラスをノードとし、関連や継承と呼ばれる関係をリンクとするネットワークです。


図1:UML クラス図の例

ソフトウェア工学で扱う他のネットワークとして、システムへの要求間の論理関係を表すゴールモデル、プログラムの振舞いの構造を表す制御フローグラフやコールグラフ、またプログラムなどの構文を表す構文木があります。さらに、理論的基礎としてのオートマトンやペトリネットといったネットワークもあります。

3.その他の研究分野におけるネットワーク

私の講座のその他の研究テーマとして知的 Web 技術がありますが、本技術では前述のソーシャルグラフやページ間リンクグラフといった、Web 上に現れる概念的なネットワークを扱います。最近では Linked Open Data(LOD)と呼ばれる、各種のデータとその間の論理的関係のネットワークを Web 上で公開し活用する技術が注目されています。
また当講座では、もう1つの研究テーマであるエージェントも含め、人工知能(AI)技術に基づく研究を多く行なっていますが、ここでも様々なネットワークが活躍しています。まず、知能の重要な構成要素である知識を表現するためのネットワークとして、オントロジ、意味ネットワーク、およびフレームモデルといったものがあります。これらは知識を構成する概念をノードとし、概念間の関係をリンクとしています。また AI の一分野である機械学習でも、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、および決定木といったネットワークを利用します。

4.おわりに

ネットワークは、グラフ理論を始めとして数学的に取り扱う理論が充実している一方、視覚的にもわかりやすい対象ですので、このように情報システム学の研究で広く利用されています。皆様も身の回りのネットワークに注目してみられてはいかがでしょうか?

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