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教員紹介 リレーコラム

情報システムが切り拓く未来 第9回 2012年6月

専門分野を拡げるということ

古賀 久志
情報システム基盤学専攻 情報システム基礎学講座

1.はじめに

自分の研究経歴を振り返ると、専門分野が幅広いのが自分の特徴です。これは自分が一般企業を経て大学教員になったことに原因があり、学生の時は離散アルゴリズム、就職した企業でネットワーク通信、そして現在は画像解析の研究に携わっています。したがって、新しい専門分野に挑戦する機会が2回ありました。情報システム学研究科は学部を持たない大学院であり、入学した学生さんは新しい専門分野で研究を始めます。そのことに不安を覚える人は多いと思います。そこで、新しい専門分野に取り組むことについて書いてみます。

学生とローマでの国際会議に参加
学生とローマでの国際会議に参加

2.新しい専門分野に取り組む方法

まず、その分野の最新動向を把握する必要があります。これは言葉では簡単ですが、毎年、何百本もの研究論文が発表されているので非常に大変です。まず、最初にするべき事は教科書を1冊買って読み切ることです。論文を読むにも基礎知識が必要なので、このステップは避けては通れません。分野をざっと把握することが目的なので、自分のレベルに合っていて短期間で読める本を選びましょう。基礎知識を習得した後は、論文を読んで最先端技術の勉強開始です。しかし、むやみに論文を読んでいては時間がいくらあっても足りないので、読む論文の選択が重要になります。私の場合は、興味を惹かれた論文の中で、現在から2年前に発表された論文を選んでいます。3年以上前に発表された論文では、その後に研究が進んでおり最先端の研究内容と言えません。逆に、ここ1年以内に発表された論文は確かに最新ですが、まだ評価が確定しておらず、マイナーな論文を選択してしまう可能性があります。論文の評価尺度としては例えば論文の引用回数が参考になります。
次は研究テーマの決定です。研究なので、他人がしていないことをする必要があります。ここで、異なる専門で培った経験はおおいに強みになります。2つの専門分野にまたがる研究テーマを発見できる可能性があるからです。例えば、画像処理の世界でも、パターン認識を最適化問題に帰着させて解くアプローチが大流行していますが、画像処理と最適化問題の両分野に精通しないと思いつけない技術です。皆さんも卒業研究などで得た知識・経験はぜひ大切にして下さい。

3.現在の研究テーマ

一番力を入れているのはグラフベースの画像処理です。これは、画像を離散アルゴリズムの基本データ構造であるグラフとしてモデル化し、グラフアルゴリズムを使って画像認識を行うというものです。このテーマに取り組んだ理由は、やはり画像処理において、自分が持っている離散アルゴリズムの知識を活かそうと思ったことがきっかけです。一方で、グラフアルゴリズムを画像のような大規模なデータに適用すると、グラフアルゴリズムの処理速度が問題になったりして、現実の問題が離散アルゴリズムの新しい研究テーマを教えてくれることもあるのがまた面白いです。


グラフベース画像処理について発表

4.最後に

我々の講座はメディア解析とネットワーク通信を研究テーマのキーワードとして挙げていますが、アルゴリズム応用を幅広く取り扱う研究室です。このようなことに興味のある方は、ぜひどうぞ。


ゼミ合宿にて

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