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教員紹介 本棚紹介

入江 英嗣 IRIE Hidetsugu

情報ネットワークシステム学専攻 ネットワークコンピューティング学講座
准教授

書棚の概略・研究テーマとの関連性

入江の研究分野はCPUの中身(コンピュータ・アーキテクチャ)と、その応用としてのコンピュータ・システムや新しいユーザアプリケーションである。コンピュータをブラックボックスにせず、一から組み上げていく分野であるため、本棚には半導体デバイスの本からアーキテクチャ、コンパイラ、OS、はてはプログラムのハウツー本まで下のレイヤーから上のレイヤーまでが含まれている。変わり種では、「CODE2.0」のような電子社会と法システムに関する本も並んでいる。

昨今では文書の電子化も進み、自宅の本棚の中身などは殆ど電子の海に移ってしまい、敢えて本棚に物理的実体を留めるものは高解像度が必要とされるイラスト集か、あとは薄い本だらけとなってしまった。仕事場の、重厚な教科書の並ぶ景色は好きなのだが、教科書の電子化も着々と進行している。電子化のメリットとしての検索やメモ挿入は、まさに教科書で学習するためには欠かせない機能である。未来の図書館の「本棚」の景色とはどのようなものになっているだろうか。

お薦めの本~学部生・一般向け

「ダーウィン以来―進化論への招待 (から続く一連のエッセイ集)」 Stephen Jay Gould (原著), 浦本 昌紀 (翻訳), 寺田 鴻 (翻訳),1995,ISBN:4150501963

一般・学部生向けには、教科書でも専門分野の本でもない、一般の文庫本の選定となった。しかし、進化論という全く別分野について書かれたこのエッセイ集は、これから研究に取り掛かる学生や、研究生活というものを少し体験した学生にとって、驚きと愉快さを伴いつつ、大変な栄養になってくれると思う。著者のグールドは、一般には「利己的な遺伝子」のドーキンスとの論争で知られるかもしれない。グールドの、過去の研究への愛ある洞察、教条的な見方に流されずに多様なものをそのまま多様なものと捉える態度、浮かんだアイデアの育て方説得の仕方は、分野を越えてあらゆる研究テーマの遂行の糧となる。研究って本当に良いなぁ、と心が満たされるエッセイ集である。標題のものに加えて「パンダの親指」「フラミンゴの微笑」などワクワクする名前の一連のシリーズが刊行されているので、たっぷり楽しむことができる。

お薦めの本~修士課程向け

「CPUの創り方」 渡波 郁(著), 2003,ISBN: 4839909865

さて困った。コンピュータ・アーキテクチャ分野では超定番とも言える教科書が二種類あり、著者の名前をとってそれぞれパタヘネ(パターソン&ヘネシー: コンピュータの構成と設計)、ヘネパタ(ヘネシー&パターソン: コンピュータ・アーキテクチャ)と呼ばれている。ヘネシーが先に来る方が上級者向け、と覚える。一部ではコンピュータを無味乾燥なシミュレーションの分野にしてしまった、などとぼやかれる教科書ではあるが、コースでは欠かせない。しかし定番なだけあって、両冊とも既に近藤先生の本棚で紹介されてしまっているのである。

そこで入江の本棚紹介では、パタヘネ・ヘネパタに負けないくらいコンピュータ・アーキテクチャ系の研究室の定番なのに、あまり表舞台に出てくることのない、裏バイブルを取り上げることにしようと思う。それがこの「CPUの創り方」。表紙からして無骨なICが並び、いきなり手に取ることをためらわせる仕様だ(ためらった理由は違うかもしれない)。表紙だけでなく、本文中でも適宜可愛いイラストが挟まれ、煮詰まった頭をほぐしてくれる。この類の「萌え教科書」は今でこそ珍しくないが、発行当時はまだ例が少なく、「嗚呼、やはりこの分野はかくも居心地の良い場所なのか」と軽く絶望したのを覚えている。

だが、どの研究室にも置いてあることは伊達ではなく、この本はただのもの珍しい本ではない。「コンピュータをブラックボックスにしない」という情熱に溢れていて、必要な知識がカバーされており、様々な意味で、コンピュータ・アーキテクチャ分野に集う若者に象徴的な本となっている。とはいえ、本書の実装は74シリーズのICを組み合わせることを念頭に解説されているので、大抵の学生さんは細かい記述を読み飛ばし、HDLを書き出すことになるのはご愛敬。

お薦めの本~博士課程・共同研究者向け

「Parallel Computer Architecture: A Hardware/Software Approach」 David Culler(著), J.P.Singh(著), Anoop Gupta(著),1998,ISBN: 1558603433

これも定番。コンピュータにおける並列処理について、何故並列処理なのか、どのような構成があり、どのような課題が生じ、どのように解決するか、最適化のコツから将来の方向性までまとめられている大著である。是非読んでおきたい名著であるが、まだ日本語版はでておらず、内容の高度さに加え、1056ページというボリューム(厚さ5.6cm!)。それでも読みたい、という情熱から、学生は読み会や勉強会を自主設定して集団で取り掛かることになるが…、途中で挫折した勉強会を一体いくつ見てきたであろうか。

一冊読み込めば、それだけでも修士に値する、とも言われる本著。学生ならではの自由な時間を活かして、是非チャレンジしてもらいたい。

教員紹介