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教員紹介 本棚紹介

佐藤 俊治 SATOH Shunji

情報メディアシステム学専攻 人間情報学講座
准教授

書棚の概略・研究テーマとの関連

私の専門は視覚計算論ということになるのでしょうか.視覚計算論にかかわる書籍を紹介してもいいのですが,物事は常に,一段上の観点から眺めると見通しがよくなります.ということで研究とは一見関係のない書籍を主に紹介します.

お薦めの本~学部生・一般向け

「学問のすすめ 現代語訳」 福澤 諭吉(著), 斎藤 孝 (翻訳), ISBN-13: 978-4480064707

表題の通り,これは現代語訳なので読みやすく仕上がっています.私は教育と研究を生業とする大学教員ですが,ふと『学問の立場を,大学教員以外の視点から見てみたい』と思い,本書を手に取りました.学生諸君も学問の真っただ中にいますが,いい意味でも悪い意味でもおもしろいことが書かれていますのでおすゝめします.
簡単にまとめると,「人間,生まれる前は平等なのかもしれんが,その後の格差は広がるばかり.賢者と愚者がいる.金持ちと貧乏がいる.これらの差は学ぶか学ばないかの違いである.だから学問をすすめる」という内容です.確かに,知名度だけで投票行為を行う愚かな有権者が減れば,社会は良くなるでしょう.荒い言葉で恐縮ですが「無知だと役人や諸外国から搾取されるので,学問をすすめる」といった,やや低級な考え方(仮想敵を想定して目標設定)も披露しています. もっともこれは福澤の意図的なアジテーションである(わざとそう言っている)ようです.
本書が記すモチベーションでは「おお!なるほど!学問しよう!」と考える現代日本人は少ないでしょう.詳しくはぜひ本文で.ところで諸君は何のために大学・大学院に進学したのですか?

「壬生義士伝」 浅田次郎, ISBN-13: 978-4167646028(上),978-4167646035(下)

研究と直接的な関係はありません.娯楽歴史小説です.映画やドラマ,漫画まであるようですが,活字の方をお薦めします. そろそろ親から独立する方,すでに独立した方,親になった方におすすめします.
私は,科学も工学も結局は人と人,そして最後は直感が大事だと思っています.定量的証拠に基づいた論理的思考で得られる(得たと思い込んでいる)結論が,社会生活において正しくないことはよくあります.もちろん,ちゃんと「学問」をした人たちが判断すれば間違いは少なくなるのですが...あ,私の研究は完璧な論理にもとづいているので問題ありません(と思いたい).
「就活のための○○」などの本を読む時間があるのならば,その前に自分をしかってくれる「人」を探すことに注力した方がよいでしょう.

高校の授業で使った数学の教科書と副教材

必ず役に立ちますので捨てずに取っておくように.

お薦めの本~修士課程向け

「Physiology of Behavior」 NR. Carlson, ISBN-13: 978-0205871940

「神経科学テキスト:脳と行動」 カールソン, 泰羅・中村 監訳, ISBN-13: 978-4621082577

脳神経科学の「まともな本」.最高の教科書です.邦訳もあるので英語の勉強(もしくはてっとり早く勉強したい人)にはもってこいです.なにをもって最高とするのかは難しいのですが,一つ確実に言えるのは「私,佐藤でも読めた!」ということは大きなファクターだと思います.私は英語版を修士課程在籍時に読みましたが,それまで生物の知識は0でした.完全に0です.どうでしょう?勇気が湧いてきませんか?

「物理数学の直感的方法」 長沼 伸一郎, ISBN-13: 978-4924460898

いきなりですがテストです:「0.5秒以内に,f(x)=3x+5 をx=2πの周りでテイラー展開せよ.」これ,できますか?あくまでも0.5秒以内です.できないのであればテイラー展開を理解しているとは言えません.学生によく言うことですが,計算は誰でもできます.微分積分だってMaximaのようなフリーソフトを使えば電卓をたたくかのごとく計算できる時代になりました.上記の問題は,テイラー展開をちゃんと理解していれば計算しなくても,Maximaを使わなくても0.4秒程度で解けます.
大学では数学を含め,色々なことを習うかと思います.しかし,定期試験が終わればほとんど忘れてしまうのが現状です(私もそうでした).「テイラー展開,言葉は聞いたことがある.だけどあれってなんだっけ?」と言う状態の方に本書をおすすめします.
本書は(物理,経済学,心理学などでしばしば登場する実用的な)数学の意味をたいへんわかりやすく記しています.いくつか項目があり各々がよくできた説明で感動できます.本書の一番いいところは,「理解するということはどういうことなのか?」を知ることができるところにあります.
もっとも数学の本当の醍醐味は,人間が理解できる/できないにかかわらず一段上のレベルから物事を見られるところにあるのだそうです.ちなみに私は天才ではないので,今のところそのレベルに達していません.天才ではありませんが一つの事項を複数の方法で説明する方法を日夜考え続けることで,少しでも近づこうとしています

お薦めの本~博士課程・共同研究者向け

「これから論文を書く若者のために(初版)」 酒井 聡樹, ISBN-13: 978-4320005648

とにかく今すぐ書店に行き買ってくること.金は私が出す.と言えるぐらいの本(出しませんが).第2部3番「イントロ大切なにをやるのかどうしてやるのかを明確に」の部分に本書の価値90%が凝縮されていると思っています.
「1.はじめに」や「1. Introduction」の執筆に困ったことはありませんか?スライドのはじめ3ページの作成に長時間かけていませんか?そもそもあなたの研究の意義を理路整然と答えることはできますか?
文章書きに困ったらこの本を手にとって読んでください.

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