情報システム学研究科は情報システムと人間・社会とのかかわりについて研究・教育する大学院です。したがって、ここでの研究内容は、情報システムに関する学術的問題を追究しそれらを解決することだけではなく、世の中で広く利用される情報システムを構築することや情報システムが社会や人間に与える影響を分析することまで多岐にわたります。
このようなさまざまな観点で行なわれた研究内容を適切に評価するために、本研究科では研究手法の違いに応じて以下の三種類の博士論文タイプを設け、それぞれの特質に応じた学位審査を行なっています。審査は通常研究科の教員5名で行ないますが、研究内容に応じそれに適した外部の専門家に加わっていただき、より適切な審査が行なえるようにしています。
注:授与する学位の種類は、論文タイプによらず、博士(工学)もしくは博士(学術)です。
論文のタイプ
1. 学術研究型論文
先端的研究として高い学術的意義や貢献を有する研究の論文です。審査にあたっては学術的な新規性や有用性を評価します。通常の多くの博士論文の審査基準がこれに相当します。
学位取得に必要な条件(課程博士の場合)
学位論文の内容に関連したオリジナル論文を学術雑誌・国際会議論文集に2件発表することが求められます。
2. システム開発型論文
社会的に意義の高い情報システムの研究開発に関する論文です。審査では、情報システムとしての有用性が高く社会に与えたインパクトが大きな業績を積極的に評価します。例えば、
- 社会のインフラとなるような情報システムの構築を主導したこと
- 多数の製品に適用される規範的、標準的な情報システムの構築を主導したこと
- 多数のダウンロード数を獲得するなど高く評価されるソフトウェアを開発したこと
などが該当します。特に、開発時期は過去であってもその成果がいまなお利用されている技術やその後の技術発展を支える礎になっている研究を高く評価します。
学位取得に必要な条件(課程博士の場合)
本人がその研究開発を主導したことを示す公知の文献(学会や研究会の発表資料、特許、書籍、会社の技術を紹介する社外誌など)および、その研究開発の成果が社会に役立っていることを示す資料が必要です。
3. 事例研究型論文
情報システムに関する事例を分析・体系化する研究に関する論文です。審査においては、将来の情報システム設計への貢献が期待されるなど、社会的に意義の高い議論を導いた研究を高く評価します。事例を調査・分析することで情報システムが社会に与えた影響やその意味について新しい視点からまとめる研究、社会的・歴史的文脈の下で情報システムの位置づけや将来像を考察する研究、情報システムに関する技術史・科学史的な研究などが含まれます。例えば、
- 多数のユーザ・企業に対するアンケート調査等を通じて、特定の情報システムが社会に与えた影響を分析する研究
- 特定の情報システムに関する調査・分析を通じて、そのシステムの社会における有効性を評価する研究
- 情報システムに関連する事例をサーベイし、独自の観点からそれらを体系的に論じる研究。
などが該当します。
学位取得に必要な条件(課程博士の場合)
学位論文の内容を学会の研究会や大会、あるいは、大学や研究機関の紀要、商用誌、書籍などにおいて発表することが必要です。
学位取得に向けた指導
特に、システム開発型論文および事例研究型論文においては、過去の研究開発業績や事例調査の結果を単に寄せ集めるのではなく、それらを体系化して統一的な観点から論理的に筋道の通った論文としてまとめることが重要です。研究科では、このような体系化のプロセスに重点をおいて指導し、最終的に意義の高い博士論文がまとめられるように指導します。